若紫

若紫の帖 | WAKAMURASAKI

これまでのあらすじ ミカドから寵愛を受けた桐壺更衣の御子が、主人公のゲンジの君である。桐壺更衣は、後宮の虐めの心労で夭逝してしまう。私生児同然になったゲンジの君だが、その美貌と才能を武器に後宮を騒がせる貴公子へと成長した。 雨の夜、ゲンジの…

若紫の帖  八 ゲンジの君、若紫を二条院に拉致する

(現代語訳) ゲンジの君は左大臣の屋敷にいた。例の内室は、すぐに会おうとはしないのだった。気まずいまま、和琴を引っ掻き鳴らして「常陸には田をこそ作れ、あだ心、や、かぬとや君が、山を越え野を越え、雨夜来ませる」などと、鄙びた詩を颯爽と歌う。 …

若紫の帖 七 兵部卿宮、若紫を訪問する

(現代語訳) ゲンジの君が帰った後、ちょうどその日に父の兵部卿宮が、アゼチの大納言の屋敷にやって来た。ますます荒廃している広くて古い建物に、人数少なく寂しく暮らしているのを見て、 「小さな子供が、こんなところでどうやって生きていくと言うので…

若紫の帖 六 尼君、ゲンジの若紫を托して他界する

(現代語訳) あの山寺の尼君は、病が小康状態なので戻っていた。都の家へゲンジの君は、時々手紙を送った。当然、返事は毎回、同じ内容が記されている。だが、いつもより波瀾万丈だったここ数ヶ月は、他のことに手を付けている暇もなく流れていった。秋が終…

若紫の帖 五 ゲンジの君と藤壺の密会と懐胎

(現代語訳) 藤壺の宮は、体調を崩し里に帰っていた。ゲンジの君は、ミカドが心配し錯乱する様子に身につまされつつも、好機が到来を感じたのだった。ただ上の空で、どこに行く出もなく、後宮でも、二条院でも、昼間は放心していた。日が暮れると、王命婦を…

若紫の帖 四 ゲンジの君、若紫を思って狂う

(現代語訳) ゲンジの君は真っ先に後宮へと向かった。ミカドにここ数日の話をする。ミカドは「ずいぶんと窶れたね」と声を詰まらせている。聖の加持は目ぼしかったかどうか聞くので、ゲンジの君は詳しく説明した。 「やんごとない阿闍梨の器であろう。修行…

若紫の帖 三 ゲンジの君、若紫の世話を申し込む。病の全快と帰京

(現代語訳) ゲンジの君は気分がすぐれないのに、雨がぽつぽつと降りはじめ、山風が吹き出した。滝の音も強まってくる。やや眠そうな経を読む声が、こんな場所で、ぼそぼそと聞こえてくるのだから、無神経な人にも悲しみを誘うだろう。ましてや煩悩の多いゲ…

若紫の帖 二 ゲンジ、若紫を発見する

(現代語訳) 日も長くなった夕暮れ時、ゲンジの君は、退屈なので深い霞にまみれて、あの柴の垣根の近くへ行ってみることにした。取り巻きたちは帰して、コレミツと一緒に覗く。目の前には西向きに仏を鎮座させ祈っている尼がいる。スダレを少し上げて、花を…

若紫の帖 一 ゲンジの君、北山に行き明石入道の娘の話を聞く

(現代語訳) ゲンジの君は発熱を繰り返していた。色々と仏の加護を祈ったが効果が無く発作が続く。ある人が、「北山のある寺に一流の修行者がおります。去年の夏にこの病気が流行したときにも、僧侶達は、匙を投げていたのですが、片っ端から治療したという…