第百八十七段

■ 原文

万の道の人、たとひ不堪なりといへども、堪能の非家の人に並ぶ時、必ず勝る事は、弛みなく慎みて軽々しくせぬと、偏へに自由なるとの等しからぬなり。

芸能・所作のみにあらず、大方の振舞・心遣ひも、愚かにして慎めるは、得の本なり。巧みにして欲しきまゝなるは、失の本なり。


■ 現代語訳

プロフェッショナルは、例えヘッポコでも、器用なアマチュアと比べれば、絶対に優れている。油断せず、万全に備え、対象を軽く見ることはない。我流とは違うのだ。

アートやビジネスに限らず、日常生活や気配りは、不器用でも控えめなら問題ない。反対に、器用でも、気ままだと、失敗を招く。