2009-04-16から1日間の記事一覧

第八十八段

■ 原文或者、小野道風の書ける和漢朗詠集とて持ちたりけるを、ある人「御相伝、浮ける事には侍らじなれども四条大納言撰ばれたものを、道風書かん事、時代や違ひ侍らん。覚束なくこそ」と言ひければ、「さ候へばこそ、世にあり難き物には侍りけれ」とて、い…

第八十七段

■ 原文下部に酒飲まする事は、心すべきことなり。宇治に住み侍りけるをのこ、京に、具覚房とて、なまめきたる遁世の僧を、こじうとなりければ、常に申し睦びけり。或時、迎へに馬を遣したりければ、「遥かなるほどなり。口づきのをのこに、先づ一度せさせよ…

第八十六段

■ 原文惟継中納言は、風月の才に富める人なり。一生精進にて読経うちして、寺法師の円伊僧正と同宿して侍りけるに、文保に三井寺焼かれし時、坊主にあひて、「御坊をば寺法師とこそ申しつれど、寺はなければ、今よりは法師とこそ申さめ」と言はれけり。いみ…