2009-07-03から1日間の記事一覧

第百五十四段

■ 原文この人、東寺の門に雨宿りせられたりけるに、かたは者どもの集りゐたるが、手も足も捩ぢ歪み、うち反りて、いづくも不具に異様なるを見て、とりどりに類なき曲物なり、尤も愛するに足れりと思ひて、目守り給ひけるほどに、やがてその興尽きて、見にく…

第百五十三段

■ 原文為兼大納言入道、召し捕られて、武士どもうち囲みて、六波羅へ率て行きければ、資朝卿、一条わたりにてこれを見て、「あな羨まし。世にあらん思い出、かくこそあらまほしけれ」とぞ言はれける。 ■ 注釈1 為兼大納言入道 ・京極為兼。定家の子孫にあた…

第百五十二段

■ 原文西大寺静然上人、腰屈まり、眉白く、まことに徳たけたる有様にて、内裏へ参られたりけるを、西園寺内大臣殿、「あな尊の気色や」とて、信仰の気色ありければ、資朝卿、これを見て、「年の寄りたるに候ふ」と申されけり。後日に、尨犬のあさましく老い…

第百五十一段

■ 原文或人の云はく、年五十になるまで上手に至らざらん芸をば捨つべきなり。励み習ふべき行末もなし。老人の事をば、人もえ笑はず。衆に交りたるも、あいなく、見ぐるし。大方、万のしわざは止めて、暇あるこそ、めやすく、あらまほしけれ。世俗の事に携は…