第七十六段

■ 原文

世の覚え花やかなるあたりに、嘆きも喜びもありて、人多く行きとぶらふ中に、聖法師の交じりて、言ひ入れ、たゝずみたるこそ、さらずともと見ゆれ。

さるべき故ありとも、法師は人にうとくてありなん。


■ 注釈

1 聖法師
 ・厳しい戒律を守って生活している隠遁人。世捨て人。

参照:聖 - Wikipedia


■ 現代語訳

社会的に偉い事になっていて、時代の波にも乗っている人のお屋敷に、葬式とか祝い事があり、大勢の人が出入りしている中に聖職者であるはずの宗教家が、玄関のインターフォンを押しているのはやりすぎだと思う。

どんな理由があるにしても、宗教家は孤独であるべきだ。