第百三十一段

■ 原文

貧しき物は、財をもッて礼とし、老いたる者は、力をもッて礼とす。己が分を知りて、及ばざる時は速かに止むを、智といふべし。許さざらんは、人の誤りなり。分を知らずして強ひて励むは、己れが誤りなり。

貧しくして分を知らざれば盗み、力衰へて分を知らざれば病を受く。


■ 現代語訳

貧乏人は、金を貢ぐのを愛情表現だと思い、老いぼれは、肉体労働の役務が社会貢献だと思っている。そう思うのは身の程知らずでしかない。自分の限界を知って、出来ない事はやらないにこしたことはない。それを許さないのなら、許さない人の頭が狂っているだけだ。身の程知らずにもリミッターを解除したら、自分の頭が狂っている証拠だ。

貧乏人が見栄を張れば泥棒になるしかなく、老人が土木作業をやり続ければ病気で死ぬのが世の常である。