第百八十段

■ 原文

さぎちやうは、正月に打ちたる毬杖を、真言院より神泉苑へ出して、焼き上ぐるなり。「法成就の池にこそ」と囃すは、神泉苑の池をいふなり。


■ 注釈

1 さぎちやう
 ・左義長・三毬杖・三毬打・三及打と当て字で書くが、意味は不明。正月の飾りなどを焼く儀式で「どんと焼き」に近い。

参照:左義長 - Wikipedia

2 毬杖(ぎちやう)
 ・正月に木製バットで毬を打って遊ぶ行事に使った杖。

参照:毬杖 - Wikipedia

3 真言
 ・平安京にあった道場。

4 神泉苑
 ・平安京にあった庭園。天皇の遊覧、狩猟が催された。

参照:神泉苑 - Wikipedia


■ 現代語訳

左義長は、正月に毬を打った棒を宮中の真言院から神泉苑に持って行き焼くことである。「修行が成功したよ」と囃すのは、神泉苑にある池で弘法大師が雨乞いに成功したことを称えているのだ。