第八十一段

■ 原文

屏風・障子などの、絵も文字もかたくななる筆様して書きたるが、見にくきよりも、宿の主のつたなく覚ゆるなり。

大方、持てる調度にても、心劣りせらるゝ事はありぬべし。さのみよき物を持つべしとにもあらず。損ぜざらんためとて、品なく、見にくきさまにしなし、珍しからんとて、用なきことどもし添へ、わづらはしく好みなせるをいふなり。古めかしきやうにて、いたくことことしからず、つひえもなくて、物がらのよきがよきなり。


■ 注釈

1 障子(しゃうじ)
 ・襖や衝立、現代の障子など、部屋を仕切る衝立の類。

参照:襖 - Wikipedia


■ 現代語訳

屏風や襖などに、下手くそな絵や文字が書いてあると、みっともないと言うよりも、持ち主の品格が疑われる。

大体の事において、持ち物から持ち主の品性が察せられる場合が多い。常識を逸した高級品を持っていれば良いという話ではない。壊れないように、無骨に作って、変な形になったり、変わっているからと、余計な部品を付けて使いづらくなったり、コテコテなのを喜んだりするのが良くないのだ。よく使い込んであって、わざとらしくなく、適正価格で作ってあり、その物が自体が良い物であればいい。