第九十五段

■ 原文

「箱のくりかたに緒を付くる事、いづかたに付け侍るべきぞ」と、ある有職の人に尋ね申し侍りしかば、「軸に付け、表紙に付くる事、両説なれば、いづれも難なし。文の箱は、多くは右に付く。手箱には、軸に付くるも常の事なり」と仰せられき。


■ 注釈

1 有職
 ・公家の儀式等の知識と、それに詳しい者。

参照:有職 - Wikipedia


■ 現代語訳

「箱に紐をくくってフタを付ける場合、どちら側を綴じればよいのでしょうか」と、ある専門家に聞いてみたところ、「右側と左側、諸説ありますが、どちらでも問題ありません。箱をレターケースとして使う場合は右側、道具入れにする場合は左側にする事が多いようです」と教えてくれた。