第百十一段
■ 原文
「囲碁・双六好みて明かし暮らす人は、四重・五逆にもまされる悪事とぞ思ふ」と、或ひじりの申しし事、耳に止まりて、いみじく覚え侍り。
■ 注釈
1 双六
・十二本の線を引いた盤上で白黒十二個の石を置き、二つのサイコロを振って出た数だけ石を動かす二人でする遊び。
2 四重
・仏教における四つの罪。淫戒、盗戒、殺人戒、妄語戒、を犯すこと。
3 五逆
・父母、阿羅漢を殺す。仏教集団を破る。仏心の血を出す。この五つの反逆をした者は無限地獄に堕ちるとされている。
参照:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%A0%E6%9E%9C%E3%81%AE%E9%81%93%E7%90%86
■ 現代語訳
「囲碁、双六を好み、朝から晩まで遊びほうけている人は、強姦、窃盗、殺人、詐欺といった犯罪や、親殺し、恩人殺し、背任、聖職者の傷害といった反逆よりも重い罪を犯している」と、ある聖人言ったのが、今でも忘れられず、ありがたく思える。