第百九十九段

■ 原文

横川行宣法印が申し侍りしは、「唐土は呂の国なり。律の音なし。和国は、単律の国にて、呂の音なし」と申しき。


■ 注釈

1 横川
 ・比叡山延暦寺の三塔の一つ。真実の道を求める僧侶が隠遁して修業した。

参照:延暦寺 - Wikipedia

2 行宣法印
 ・伝未詳。法印は僧位。

参照:法印 - Wikipedia

3 呂
 ・呂旋法。雅楽で使われる音階の一つ。対的音程関係はソ・ラ・シ・ド・レ・ミ・ファとなる。

参照:呂旋法 - Wikipedia

4 律
 ・律旋法。相対的音程関係はレ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ドとなる。

参照:律旋法 - Wikipedia


■ 現代語訳

横川で修行した行宣法印が、「中国は音階でいうと長調の国で、短調の音がない。倭国は変短調で、長調の音がない」と言っていた。