2009-04-01から1日間の記事一覧

第二十八段

■ 原文諒闇の年ばかり、あはれなることはあらじ。倚廬の御所のさまなど、板敷を下げ、葦の御簾を掛けて、布の帽額あらあらしく、御調度どもおろそかに、皆人の装束・太刀・平緒まで、異様なるぞゆゝしき。 ■ 注釈1 諒闇(りゃうあん) ・天皇が両親の喪に服…

第二十七段

■ 原文御国譲りの節会行はれて、剣・璽・内侍所渡し奉らるるほどこそ、限りなう心ぼそけれ。新院の、おりゐさせ給ひての春、詠ませ給ひけるとかや。殿守のとものみやつこよそにして掃はぬ庭に花ぞ散りしく今の世のこと繁きにまぎれて、院には参る人もなきぞ…

第二十六段

■ 原文風も吹きあへずうつろふ、人の心の花に、馴れにし年月を思へば、あはれと聞きし言の葉ごとに忘れぬものから、我が世の外になりゆくならひこそ、亡き人の別れよりもまさりてかなしきものなれ。されば、白き糸の染まんことを悲しび、路のちまたの分れん…

第二十五段

■ 原文飛鳥川の淵瀬常ならぬ世にしあれば、時移り、事去り、楽しび、悲しび行きかひて、はなやかなりしあたりも人住まぬ野らとなり、変らぬ住家は人改まりぬ。桃李もの言はねば、誰とともにか昔を語らん。まして、見ぬ古のやんごとなかりけん跡のみぞ、いと…

第二十四段

■ 原文斎宮の、野宮におはしますありさまこそ、やさしく、面白き事の限りとは覚えしか。「経」「仏」など忌みて、「なかご」「染紙」など言ふなるもをかし。すべて、神の社こそ、捨て難く、なまめかしきものなれや。もの古りたる森のけしきもたゞならぬに、…