2009-03-27から1日間の記事一覧

第五段

■ 原文不幸に憂に沈める人の、頭おろしなどふつゝかに思ひとりたるにはあらで、あるかなきかに、門さしこめて、待つこともなく明し暮したる、さるかたにあらまほし。 顕基中納言の言ひけん、配所の月、罪なくて見ん事、さも覚えぬべし。 ■ 注釈1 顕基中納言…

第四段

■ 原文後の世の事、心に忘れず、仏の道うとからぬ、心にくし。 ■ 現代語訳死んでしまった後のことをいつも心に忘れず、仏様の言うことに無関心でないのは素敵なことだ。

第三段

■ 原文万にいみじくとも、色好まざらん男は、いとさうざうしく、玉の巵の当なき心地ぞすべき。 露霜にしほたれて、所定めずまどひ歩き、親の諫め、世の謗りをつゝむに心の暇なく、あふさきるさに思ひ乱れ、さるは、独り寝がちに、まどろむ夜なきこそをかしけ…

第二段

■ 原文いにしへのひじりの御代の政をも忘れ、民の愁、国のそこなはるゝをも知らず、万にきよらを尽していみじと思ひ、所せきさましたる人こそ、うたて、思ふところなく見ゆれ。 「衣冠より馬・車にいたるまで、あるにしたがひて用ゐよ。美麗を求むる事なかれ…

第一段

■ 原文いでや、この世に生れては、願はしかるべき事こそ多かンめれ。御門の御位は、いともかしこし。竹の園生の、末葉まで人間の種ならぬぞ、やんごとなき。一の人の御有様はさらなり、たゞ人も、舎人など賜はるきはは、ゆゝしと見ゆ。その子・うまごまでは…

序文

■ 原文つれづれなるまゝに、日くらし、硯にむかひて、心に移りゆくよしなし事を、そこはかとなく書きつくれば、あやしうこそものぐるほしけれ。 ■ 注釈1 つれづれ ・(形容詞ナリ)何もすることが無くて手持ちぶさたな様子 などと古語辞典には書いてあるの…

はじめに

吾妻利秋と申します。数年前にhttp://www.tsurezuregusa.com/index.htmlというサイトで徒然草の翻訳をしていました。この翻訳はかなりの誤字脱字、仕舞いには行抜けなどがありまして、いつかは校閲しなければならないと思っていました。しかし、ぼくは怠け者…

第七段

■ 原文あだし野の露消ゆる時なく、鳥部山の煙立ち去らでのみ住み果つる習ひならば、いかにもののあはれもなからん。世は定めなきこそいみじけれ。 命あるものを見るに、人ばかり久しきはなし。かげろふの夕べを待ち、夏の蝉の春秋を知らぬもあるぞかし。つく…

第六段

■ 原文わが身のやんごとなからんにも、まして、数ならざらんにも、子といふものなくてありなん。 前中書王・九条大政大臣・花園、みな、族絶えむことを願い給へり。染殿大臣も、「子孫おはせぬぞよく侍る。末のおくれ給へるは、わろき事なり」とぞ、世継の翁…