源氏物語

源氏物語の想い出

いまから十年前に翻訳を始めて頓挫した『源氏物語』の翻訳を、ここ(旧徒然草校閲日記)に再公開します。(誰も気がつかないと思いますが) 翻訳再開の見込みはありませんが、私が仕事にあぶれて路頭に迷ったら、こっそりと再開するかも知れません。 十年前…

帚木の帖 | HAHAKIGI

主人公、ゲンジ十七歳の夏である。 ■ これまでのあらすじ ミカドから寵愛をうけた桐壺更衣だが、玉のように清らかな御子を出産すると、いじめの心労からか逝去してしまった。この御子が主人公のゲンジである。彼は、この世の人間とは思えぬ美貌の持ち主なだ…

空蝉の帖 | UTSYUSEMI

主人公、ゲンジ十七歳の夏である。 ■ これまでのあらすじ ミカドから寵愛をうけた桐壺更衣だが、玉のように清らかな御子を出産すると、いじめの心労からか逝去してしまう。この御子が主人公のゲンジである。彼は、この世の人間とは思えぬ美貌の持ち主なだけ…

夕顔の帖 | YUHGA0

主人公、ゲンジ十七歳の夏から十月までのことである。 六条御息所 …… 二十四歳 夕顔 …… 十九歳 葵上 …… 二十一歳 ■ これまでのあらすじ ミカドから寵愛をうけた桐壺更衣だが、玉のように清らかな御子を出産すると、いじめの心労からか逝去してしまう。この御…

若紫の帖 | WAKAMURASAKI

これまでのあらすじ ミカドから寵愛を受けた桐壺更衣の御子が、主人公のゲンジの君である。桐壺更衣は、後宮の虐めの心労で夭逝してしまう。私生児同然になったゲンジの君だが、その美貌と才能を武器に後宮を騒がせる貴公子へと成長した。 雨の夜、ゲンジの…

末摘花の帖 | SUETSUMUHANA

主人公、ゲンジ十八歳の正月から十九歳の正月までの一年間。 若紫 …… 十一歳 これまでのあらすじ 主人公、光ゲンジは皇帝の息子である。彼の母親は桐壺更衣と呼ばれた、なかなかの美人だった。あまりにも帝が溺愛したため、周りの妾たちから反感を買った桐壺…

紅葉賀の帖 | MOMIDINOGA

主人公、ゲンジ十八歳の正月から十九歳の秋までである。 藤壺 …… 二十三歳から二十四歳 葵上 …… 二十二歳から二十三歳 若紫 …… 十歳から十一歳 これまでのあらすじ 主人公、光ゲンジは皇帝の息子である。彼の母親は桐壺更衣と呼ばれた、なかなかの美人だった…

花宴の帖 | HANANOEN

主人公、ゲンジ二十歳の春である。 藤壺 …… 二十五歳 葵上 …… 二十四歳 若紫 …… 十二歳 これまでのあらすじ 主人公、光ゲンジは皇帝の息子である。彼の母親は桐壺更衣と呼ばれた、なかなかの美人だった。あまりにも帝が溺愛したため、周りの妾たちから反感を…

花宴の帖  一 桜の宴

(現代語訳) きさらぎの二十日頃には、紫宸殿で桜の宴があった。ミカドの玉座の左右に、藤壺中宮と東宮の御座所が設置され、二人がお出ましになるのだった。弘徽殿女御は、藤壺が中宮の御座所に鎮座しているのを見るたびに癪に触って仕方ないのだが、宴会見…

紅葉賀の帖 五 藤壺の立后、ゲンジの君の昇進

(現代語訳) 七月には、藤壺宮が中宮に立ったようである。ゲンジの君も太政官の参議に昇進したのだった。ミカドは、近く引退する決意で「藤壺宮が産んだ若宮を東宮にしたい」と目論んでいる。しかし、適当な後見人もいなく、藤壺宮の親族は皆、皇子たちなの…

紅葉賀の帖 四 源内侍と夕立の夜

(現代語訳) ミカドはいい年をして、なお女好きだった。配膳や身の回りの世話をする女官たちも、見た目や性格を重視していたので、後宮の女たちは精鋭揃いなのである。ゲンジの君がちょっかいを出すにしても、相手には事欠かない風情なので、もう見飽きてし…

紅葉賀の帖 三 藤壺宮の御子誕生

(現代語訳) ゲンジの君が参賀に行く場所は、数が知れていた。ミカドと、皇太子、それから前のミカドだけだったが、藤壺宮がいる三条宮殿にも行った。 「今日は格別に美しく見えること。歳を重ねて、怖いぐらいに成熟されていますわね」 と囁き合う女官たち…

紅葉賀の帖 二 ゲンジの君、里に下がった藤壺を訪ねる。その後の若紫

(現代語訳) そんな折、藤壺宮は里に下がった。当然ながら、ゲンジの君は、何とかして逢えないものかと、機会を探して徘徊していたので、左大臣家では騒乱が発生していた。おまけに、あの若紫を引き取ってから、誰かが「二条院では、女を囲っているようです…

紅葉賀の帖 一 紅葉の賀

(現代語訳) 朱雀院への行幸は十月十日頃なのだった。ありふれた行事とは違って世紀の祭典なのだから、後宮の后や女御たちは、鑑賞できずに不満が募った。ミカドは、藤壺宮に見物させてやれないのを寂しく思ったので、後宮で通し稽古をさせることにしたのだ…

末摘花の帖 六 ゲンジの君、若紫と絵を描く

(現代語訳) ゲンジの君が二条院に戻ると、まだ大人になりきっていない若紫だが、とても美しかった。「同じ紅でも、こんないとしい色もあるのだな」と見つめた着物は、無地の桜色なのだった。柔らかく着こなして澄ましているのが、可愛いばかりである。昔気…

末摘花の帖 五 末摘花、ゲンジに着物を贈る

(現代語訳) 年も暮れゆく。ゲンジの君が、後宮の宿直所にいると、タイフの命婦がやってきた。髪を梳かせたりするには、色っぽい関係でなくて、それでいて冗談を言えるような女が良かったので、タイフの命婦は、もってこいなのであった。タイフの命婦も、話…

末摘花の帖 四 ゲンジ、雪の朝に末摘花の鼻に絶句する

(現代語訳) 朱雀院の行幸が近づくと、ミカドの御前で試演などが始まり騒がしくなってくる。その頃、タイフの命婦が後宮に戻ってきた。 「あの人はどうしている」 とゲンジの君は詰め寄った。気の毒には思っているらしい。タイフの命婦は状況を報告して、「…

末摘花の帖 三 ゲンジの君と中将の勝負。ゲンジ、末摘花に逢う

(現代語訳) ゲンジの君と頭中将は、さっきの琴の音を思い出した。あの粗末な住処も、別世界のようで心に焼き付いている。頭中将に至っては「もし、あんな場所に、凄い可憐な女が寂しく何年も住んでいたとしよう。私と結ばれて好きになってしまう女だったと…

末摘花の帖 二 頭中将の尾行、中務の恋

(現代語訳) 今夜は、他に密通する場所があるのだろうか。ゲンジの君は、そわそわと帰ろうとする。 「ミカドが、ゲンジの君は堅物で困る、と勘違いして心配しているから、あたしは可笑しくて。まさか、こんな不純な夜歩きをしているなんて知らないでしょう…

末摘花の帖 一 十六夜の琴

(現代語訳) ゲンジの君は、何度思い出してもあの夕顔の露のように儚く逝った人を忘れられない。年月を経ても悲しく思った。どこを見渡しても気取った面倒な女たちが、互いに牽制し合っているだけなのである。あの無邪気な夕顔を、懐かしく、かけがえのない…

若紫の帖  八 ゲンジの君、若紫を二条院に拉致する

(現代語訳) ゲンジの君は左大臣の屋敷にいた。例の内室は、すぐに会おうとはしないのだった。気まずいまま、和琴を引っ掻き鳴らして「常陸には田をこそ作れ、あだ心、や、かぬとや君が、山を越え野を越え、雨夜来ませる」などと、鄙びた詩を颯爽と歌う。 …

若紫の帖 七 兵部卿宮、若紫を訪問する

(現代語訳) ゲンジの君が帰った後、ちょうどその日に父の兵部卿宮が、アゼチの大納言の屋敷にやって来た。ますます荒廃している広くて古い建物に、人数少なく寂しく暮らしているのを見て、 「小さな子供が、こんなところでどうやって生きていくと言うので…

若紫の帖 六 尼君、ゲンジの若紫を托して他界する

(現代語訳) あの山寺の尼君は、病が小康状態なので戻っていた。都の家へゲンジの君は、時々手紙を送った。当然、返事は毎回、同じ内容が記されている。だが、いつもより波瀾万丈だったここ数ヶ月は、他のことに手を付けている暇もなく流れていった。秋が終…

若紫の帖 五 ゲンジの君と藤壺の密会と懐胎

(現代語訳) 藤壺の宮は、体調を崩し里に帰っていた。ゲンジの君は、ミカドが心配し錯乱する様子に身につまされつつも、好機が到来を感じたのだった。ただ上の空で、どこに行く出もなく、後宮でも、二条院でも、昼間は放心していた。日が暮れると、王命婦を…

若紫の帖 四 ゲンジの君、若紫を思って狂う

(現代語訳) ゲンジの君は真っ先に後宮へと向かった。ミカドにここ数日の話をする。ミカドは「ずいぶんと窶れたね」と声を詰まらせている。聖の加持は目ぼしかったかどうか聞くので、ゲンジの君は詳しく説明した。 「やんごとない阿闍梨の器であろう。修行…

若紫の帖 三 ゲンジの君、若紫の世話を申し込む。病の全快と帰京

(現代語訳) ゲンジの君は気分がすぐれないのに、雨がぽつぽつと降りはじめ、山風が吹き出した。滝の音も強まってくる。やや眠そうな経を読む声が、こんな場所で、ぼそぼそと聞こえてくるのだから、無神経な人にも悲しみを誘うだろう。ましてや煩悩の多いゲ…

若紫の帖 二 ゲンジ、若紫を発見する

(現代語訳) 日も長くなった夕暮れ時、ゲンジの君は、退屈なので深い霞にまみれて、あの柴の垣根の近くへ行ってみることにした。取り巻きたちは帰して、コレミツと一緒に覗く。目の前には西向きに仏を鎮座させ祈っている尼がいる。スダレを少し上げて、花を…

若紫の帖 一 ゲンジの君、北山に行き明石入道の娘の話を聞く

(現代語訳) ゲンジの君は発熱を繰り返していた。色々と仏の加護を祈ったが効果が無く発作が続く。ある人が、「北山のある寺に一流の修行者がおります。去年の夏にこの病気が流行したときにも、僧侶達は、匙を投げていたのですが、片っ端から治療したという…

夕顔の帖 十四 空蝉、伊予に下る

(現代語訳) 伊予のスケは十月の初日に任地へと旅だった。ゲンジの君は「女官たちも一緒に旅立つのだろう」と心づくしのはなむけをする。他にも、こっそりと手の込んだ細工を施した櫛や扇を数多く、道中で奉納する手間をかけさせた祓え幣を贈り、あの薄い衣…

夕顔の帖 十三 夕顔の四十九日

(現代語訳) 夕顔の四十九日の法要は人目を憚って、比叡山の法華堂で行われた。簡単な式ではなく、死装束からはじめ、必要な物は全て入念に揃えて経文を唱えさせた。経や仏の飾りも格別である。コレミツの兄の阿闍梨は、徳の高い人なので立派に取り仕切った…