源氏物語の想い出
いまから十年前に翻訳を始めて頓挫した『源氏物語』の翻訳を、ここ(旧徒然草校閲日記)に再公開します。(誰も気がつかないと思いますが)
翻訳再開の見込みはありませんが、私が仕事にあぶれて路頭に迷ったら、こっそりと再開するかも知れません。
十年前に前に書いた前書きめいた文章も発掘したのですが、読み返すと我ながら情けない気分になってきたので燃やしてしてしまうことにします。
参考文献のメモが残っていたので、これだけは書き写しておきます。
(参考文献など)
一、本訳は学生諸君の古典学習には非常に適さないばかりか、多くの古典愛好家にとって吐き気を催させるものである。
一、本訳は三条西実隆筆になる青表紙証本(宮内庁書陵部蔵)を底本とした。いわゆる三条西実隆証本の親本である。という岩波文庫『源氏物語』山岸徳平校注を底本とした。
一、原文は岩波文庫『源氏物語』と異なり振り仮名、括弧等を省略した。
一、本訳は大学入試などの学習にも非常に適さない。敬語・尊敬語の類は片っ端から無視し、読みやすさと勢いだけを重視する。
一、本訳は言わずと知れた意訳であり『源氏物語』の原文が持つ優美さからは、かけ離れてしまうかも知れないが、『源氏物語』は、じゅうぶん優雅なまでにも浮世離れしたストーリーなので、思ったままに訳す。
一、訳者が覚束ない単語等については、原文とともに脚注を施す。ただし、勘違い等があることが容易に予想できるため、訳者は一切の責任を持たない。
一、各巻の最初に、主要登場人物の年齢と関係図を掲載する予定である。
一、『源氏物語』には七百九十五首の和歌が詠まれている。谷崎潤一郎でさえ躊躇っていたのであるが、訳者が現代短歌に変換する予定である。
一、登場人物は作品中で名前をコロコロ変更されるが、必要と思われる箇所についてはその旨を折り込む。
一、本訳の参考資料として講談社学術文庫『源氏物語湖月抄』北村季吟/有川武彦校訂、および三省堂『源氏物語(ハンドブック)』鈴木日出男編を用い、確認用に中公文庫『潤一郎訳 源氏物語 改版』を使う。古語辞典はいつも通り旺文社の改訂新版である。電子辞書には『広辞苑第五版』も入っている。これだけの参考資料で『源氏物語』を翻訳するのは無謀だと百も承知であるが、図書館に行く時間も、資料を買うお金もないのでご容赦願いたい。
一、翻訳にあたって、平安文学少女の気分になりきるため『更級日記』菅原孝標女著を愛読し、挫折しそうになったときのために『蘭学事始』杉田玄白著を鞄に詰め込んだ。
桐壺の帖 | KIRITSUBO
主人公、ゲンジが誕生してから十二歳頃までのお話。桐壺更衣は二十歳前に死んでしまった。ゲンジが三歳、秋が始まった頃である。
(年齢は数え年)
帚木の帖 | HAHAKIGI
主人公、ゲンジ十七歳の夏である。
■ これまでのあらすじ
ミカドから寵愛をうけた桐壺更衣だが、玉のように清らかな御子を出産すると、いじめの心労からか逝去してしまった。この御子が主人公のゲンジである。彼は、この世の人間とは思えぬ美貌の持ち主なだけでなく、学問、音楽においても類い希なる才能の片鱗を顕した。
桐壺更衣の死を悼み、廃人同然となっていたミカドだが、亡き人の生き写しとも思える藤壺女御の出現により再び生気を取り戻す。ゲンジは藤壺女御に亡き母への思いを寄せ、次第に一人の女性として恋心を募らせてしまう。元服し、左大臣の後見を得た源氏だが、正妻の葵上との関係は平行線をたどるだけで、ますます藤壺更衣への想いで胸を焦がす。
宮私生児同然のゲンジだが、その美貌と才能を武器に着々と大人になっていく。人々は彼のことを「光り輝く君」と呼んだ。
空蝉の帖 | UTSYUSEMI
主人公、ゲンジ十七歳の夏である。
■ これまでのあらすじ
ミカドから寵愛をうけた桐壺更衣だが、玉のように清らかな御子を出産すると、いじめの心労からか逝去してしまう。この御子が主人公のゲンジである。彼は、この世の人間とは思えぬ美貌の持ち主なだけでなく、学問、音楽においても類い希なる才能の片鱗を顕した。
桐壺更衣の死を悼み、廃人同然となっていたミカドだが、亡き人の生き写しとも思える藤壺女御の出現により再び生気を取り戻す。ゲンジは藤壺女御に亡き母への思いを寄せ、次第に一人の女性として恋心を募らせてしまう。元服し、左大臣の後見を得た源氏だが、正妻の葵上との関係は平行線をたどるだけで、ますます藤壺更衣への想いで胸を焦がす。
宮私生児同然のゲンジだが、その美貌と才能を武器に後宮を騒がせる貴公子となった。人々は彼のことを「光り輝く君」と呼ぶ。
物忌みの続くある日、ゲンジの部屋へとやって来た貴公子達は、恋愛談義に花を咲かせる。これが世に言う「雨夜の品定め」である。頭中将、左馬のカミ、藤シキブの丞の体験談を聞き、ゲンジは中流階級の姫君に興味を持った。
翌日、ゲンジは方位除けに訪れた紀伊のカミの家で、地方官の伊予のスケの後妻である空蝉と関係を持ってしまう。空蝉はゲンジに憧れはすれども、これ以上関わってはいけないと悩むのだった。
夕顔の帖 | YUHGA0
主人公、ゲンジ十七歳の夏から十月までのことである。
六条御息所 …… 二十四歳
夕顔 …… 十九歳
葵上 …… 二十一歳
■ これまでのあらすじ
ミカドから寵愛をうけた桐壺更衣だが、玉のように清らかな御子を出産すると、いじめの心労からか逝去してしまう。この御子が主人公のゲンジである。彼は、この世の人間とは思えぬ美貌の持ち主なだけでなく、学問、音楽においても類い希なる才能の片鱗を顕した。そして、ゲンジはミカドの後妻、藤壺女御に亡き母への思いを寄せてしまう。宮私生児同然のゲンジだが、その美貌と才能を武器に後宮を騒がせる貴公子となった。
物忌みの続くある日、ゲンジの部屋へとやって来た貴公子達は、恋愛談義に花を咲かせる。これが世に言う「雨夜の品定め」である。頭中将、左馬のカミ、藤シキブの丞の体験談を聞き、ゲンジは中流階級の姫君に興味を持った。
翌日、ゲンジは方位除けに訪れた紀伊のカミの家で、地方官の伊予のスケの後妻である空蝉と関係を持ってしまう。空蝉はゲンジに憧れはすれども、これ以上関わってはいけないと悩むのだっが、ゲンジは懲りず奇襲に打って出る。ゲンジが空蝉の弟の手引きで、部屋の中を覗くと、空蝉が男好きのする軒端の荻を相手に碁を打っていた。ゲンジは、その夜、二度目の奇襲をかける。それに気がついた空蝉は、小袿を残して逃亡した。なぜかゲンジは、そのまま軒端の荻と過ちを犯してしまうのだが、やはり空蝉が忘れられない。空蝉もゲンジの情熱を思って煩悶し、自らの運命をなぞって、思い出した和歌を書きなぞる。
若紫の帖 | WAKAMURASAKI
これまでのあらすじ
ミカドから寵愛を受けた桐壺更衣の御子が、主人公のゲンジの君である。桐壺更衣は、後宮の虐めの心労で夭逝してしまう。私生児同然になったゲンジの君だが、その美貌と才能を武器に後宮を騒がせる貴公子へと成長した。
雨の夜、ゲンジの君は、部屋に訪れた貴公子たちの話を聞き、中流階級の姫君に興味を持つ。翌日、ゲンジの君は人妻の空蝉と関係を持ってしまった。空蝉はゲンジの君に憧れながらも、深みに嵌らぬよう執拗に拒む。ゲンジの君は空蝉を求めて奇襲を仕掛けるが、空蝉は夏衣を一枚残し消えてしまうのであった。空蝉はゲンジの君の愛情を思って悶絶し、自らの運命を重ねた和歌をなぞる。
失意のゲンジの君は、乳母であるコレミツの母を五条に見舞った。隣には白い花が咲く家があった。女童が白い花を乗せて差し出した扇に、意味深な歌がしたためてあり、ゲンジの君はこの家の姫君に興味を持つ。お互いに正体を隠したままの恋が始まり、次第に二人は引かれあう。八月の十五夜、ゲンジの君は女を荒ら屋に誘った。その夜、ゲンジは女の可愛さに心を奪われるのだが、深夜に悪霊が現れ女に取り憑いた。女は未明に息を引き取った。コレミツの力を借りて人知れず葬儀を済ませたが、ゲンジの君も病に倒れてしまう。病状の回復後、女に付き添った女官の右近から詳細を聞き、ゲンジの君は、頭中将の愛人の夕顔だったと知るのだった。
末摘花の帖 | SUETSUMUHANA
主人公、ゲンジ十八歳の正月から十九歳の正月までの一年間。
若紫 …… 十一歳
これまでのあらすじ
主人公、光ゲンジは皇帝の息子である。彼の母親は桐壺更衣と呼ばれた、なかなかの美人だった。あまりにも帝が溺愛したため、周りの妾たちから反感を買った桐壺更衣は、いじめの心労から夭逝してしまう。幼くして私生児となった光ゲンジは、信じられないほどの美貌と才能を武器に、後宮を騒がせる貴公子に成長するのだった。帝は光ゲンジを皇帝の後釜に据えたかったのだが、占い師の助言により、源氏姓を与え臣籍に下した。
桐壺更衣の死後、帝がふさぎ込むので後宮も沈んでいた。しかし藤壺女御が後宮に入内すると、再び華やぐ。何と藤壺女御は桐壺更衣に瓜二つなのだった。幼くして母親を亡くした光ゲンジは、次第に藤壺更衣に惹かれ、挙げ句の果てには理想の女性像までに祭り上げてしまう。世間は、この二人を「光る君、輝く宮」と呼んだ。
光ゲンジは元服後、左大臣の娘であるアオイを正室に迎える。これは、私生児同然だった彼に、左大臣家という強力な後見人ができたことを意味する。左大臣の息子を皇子の嫁にと考えていた右大臣家の人々(特に弘徽殿女御)は、光ゲンジを忌々しく思うのだった。
物忌の雨の夜、光ゲンジの部屋に貴公子たちが集まり、恋愛談義に花が咲く。話題は中流階級の姫君の話で盛り上がった。中でも、光ゲンジは、アオイの兄である頭中将が話した、内気な常夏の女(夕顔)の話に興味を持つ。これが「雨夜の品定め」である。
中流階級の女に興味を持った光るゲンジは、地方官僚の後妻である空蝉と関係を持ってしまうのだった。空蝉は光ゲンジとの関係を後悔し、恋の泥沼を恐れて拒み続ける。光ゲンジは空蝉の弟をそそのかし、再び空蝉を襲うのだが、空蝉は夏衣を一枚残して逃げたのだった。空蝉は自らの境遇を情けなく思い、和歌をなぞって運命を重ねた。
空蝉に逃げられて傷心の、光ゲンジは、六条の貴婦人のもとへと密通するついでに、病気である乳母の、コレミツの母を見舞う。コレミツは光ゲンジの家来でもある。光ゲンジは、コレミツの家の隣に白い花の咲く家を発見し、この家の女主人に興味を持った。女の童が扇の上に白い花を乗せて差し出すと、そこには意味深な歌が書いてある。お互いの正体を隠したまま密通がはじまった。満月の夜、光ゲンジは女を誘って、ある荒ら屋に連れ込む。その夜、光ゲンジは可憐な女に心を奪われるのだが、なんと深夜に悪霊が現れ、女を呪い殺してしまうのだった。コレミツの協力により女の密葬を済ませると、光ゲンジも病に倒れる。病気の回復後、女に付き添った女官の右近から亡き人の正体を聞くと、頭中将の愛人、夕顔なのだった。
光ゲンジは、わらわ病の治療のため、北山の聖を訪ねる。そこで、明石に住む入道とその秘蔵娘の話を聞くのだった。光ゲンジは入道の堅物ぶりに興味を持ち、その姫君のことが気になった。
病快復の祈祷のついでに、光ゲンジが北山の僧坊を覗いてみると、品の良い尼君と、なかなかの女官、そして可愛い少女を発見する。その少女が、憧れの人、藤壺女御にそっくりなのだった。事情を聞けば、少女は藤壺女御の姪という血筋である。光ゲンジはこの少女を手に入れて、自分の思い通りに教育してみたいと思った。
或日、藤壺女御が療養のため実家に下がった。その隙に、光ゲンジは藤壺女御と二度目の関係を持ってしまうのだった。なんとその後、藤壺女御は光ゲンジの子供を身籠もってしまう。藤壺女御は自分の運命を呪い、帝を裏切ったことに心を痛めた。
北山の尼君が、幼い姫君を残して病死する。光ゲンジは、この少女を引き取りたいと申し出るのだが、まだ結婚できる年齢ではなく、似つかわしくないと悉く断られてしまう。少女は父の兵部卿宮のもとへ引き取られることになった。
父宮が、少女を引き取る日の朝、光ゲンジは少女を強引に誘拐する。そして二条院に囲い、教育を開始するのだった。この姫君は、藤壺女御と縁のある血筋なので、若紫と呼ばれた。